それでは実際にValueObjectを作成してみましょう。データベースの列項目はすべてValueObjectになりえます。
ValueObjectsフォルダーの作成
ドメインプロジェクトを右クリックして「追加」「新しいフォルダー」を選択し,作成したフォルダーの名前を「ValueObjects」にします。
ValueObjectの対象
MeasureEntityにある,3つのプロパティをValueObjectにしていきます。
AreaIdの作成
ValueObjectsフォルダーを右クリックして,新しいクラスを作成します。
クラス名はそのままAreaIdとします。作成されたクラスに次のようにコーディングします。
namespace NDDD.Domain.ValueObjects { public sealed class AreaId { public AreaId(int value) { Value = value; } public int Value { get; } } }
アクセス修飾子はpublicで,継承させないのでsealedとします。 コンストラクタを作成し,引数のvalueはAreaIdのデータベースの型と合わせるため,intとします。その引数の値を記憶するためのプロパティをpublic int Value{get;}として作成します。getだけにしているのは読み取り専用にするためです。読み取り専用のプロパティはコンストラクタでのみ値の変更が可能なので,コンストラクタが呼ばれた後は,値が変化しないことが保証されます。これを完全コンストラクタパターンといい,値の変更が不要なプロパティはこのようにすることで,コードの可読性が上がります。ようは,途中で値が変更されていないことが保証されると,不具合時や,改造時に,コードの解析が楽になります。ValueObjectは,生まれたら,その後値の変更は行わないようにし,ロジック付きの値といった感じで扱います。
Valueの値はコンストラクタが通過した時点で確定しますが,Valueに対してのロジックはこのクラスでいくらでも書くことができます。
イコールの問題
ValueObjectはイコールの問題というのがあり,それを解消しないといけません。イコールの問題とは,ValueObjectがクラスという参照型で作成されているため,値の3で生成したAreaIdクラスと,同じく値の3で生成したAreaIdをイコールかどうかを検証しても,イコールではないと判断されます。クラスのイコールはアドレスを比較するので,絶対イコールにはならないという特性があります。値型といわれるintなどであれば,値の3と値の3を比較すれば,もちろんイコールとなります。この辺りのクラスの特性を吸収しないといけないので,次回のレクチャーで解説していきます。
#02_プロジェクトの追加
#03_依存関係
#04_ドメイン駆動開発でApplication層は必要?
#05_Domainのフォルダー構成
#06_Infrastructureのフォルダー構成
#07_WinFormのフォルダー構成
#08_Testsのフォルダー構成
#09_テスト駆動で実装するための事前準備
#10_テストコードとViewModelの追加
#11_テストコードを追加する
#12_ Repositoriesフォルダーの作成
#13_ Entitiesフォルダーの作成
#14_ Mockの作成
#15_フォーム画面の作成
#16_画面のコントロールデータバインドする
#17_Fakeを使ってタミーデータを画面に表示させる
#18_Fakeデータを画面に通知する
#19_PropertyChangedの方法を変更する
#20_Fakeとデータベースの値を切り替える方法
#21_Sharedクラスを作成する
#22_クラスを生成するファクトリークラスを作る
#23_#if DEBUGでFakeデータがリリースされないようにする
#24_DEBUGモードであることをわかりやすくしておく
#25_Factories以外から生成できないようにしておく
#26_Factoriesの呼び出しはViewModelで行う
#27_外部の設定ファイルの値で判断する
#28_Fakeデータを切り替える方法
#29_FakePathを設定ファイルとSharedに移す
#30_Fakeデータのバリエーション
#31_Shareクラスの活用方法
#32_ベースフォームを作る
#33_SharedにログインIDを記憶する
#34_BaseFormでログインユーザーを表示する
#35_ValueObject
#36_ValueObjectを作成する
#37_抽象クラスValueObjectを使用してイコールの問題の解消
#38_AreaIdにビジネスロジックを入れる
#39_AreaIdクラスをEntityに乗せる
#40_MeasureDateの作成
#41_MeasureValueの作成
#42_オブジェクト指向の自動化
#43_Repositoryの具象クラス
#44_例外処理
#45_例外の作成
#46_インナーエクセプション
#47_例外の欠点
#48_メッセージの区分
#49_エラー処理の共通化
#50_ログの出力
#51_タイマー処理はどこに置く?
#52_タイマークラスの作成
#53_StaticValues
#54_Logics
#55_Helpers
#56_Module
#57_トランザクションはどこでかける?
#58_特徴を見極める
#59_さいごに