前回はFakeとSqlServerの切り替えを行う準備として,Sharedクラスを作り,そこにIsFakeフラグを作りました。今回は,それを使って実際にFakeとSqlServerを切り替えていきましょう。
ファクトリーパターン
オブジェクト指向の世界には色々な実装パターンがあり,クラスを生成するだけを専門とするファクトリーパターンというのが存在します。FakeとSqlServerのどちらを生成するのが正しいのか?という事を知っているクラスはアプリケーションに1つだけあればよくて,今回であればSharedのIsFakeの状態をみて,FakeとSqlServerを切り替えてほしいので,そういった生成を間違いなく行ってくれるクラスを作成します。そういう生成を専門にしたクラスをファクトリークラスと呼んでいます。
Factoriesクラスの作成
それでは実際にファクトリークラスを作っていきます。クラスの名前はFactoriesとします。Factory(ファクトリー)の複数形です。このFactoriesでは,各種リポジトリーの生成を行うことを目的としていて,IMeasureRepositoryの生成だけではないので,複数形としています。
Infrastructureの直下にFactoriesクラスを作成しましょう。Infrastructureのプロジェクトを右クリックして,「追加」「クラス」の順に選択します。
クラス名は先述の通り,「Factories」として「追加」を押下します。
Factoriesクラスのコーディング
それではコーディングをしていきましょう。
namespace NDDD.Infrastructure { public static class Factories { } }
アクセス修飾子はpublicとし,アプリケーションに1つだけでいいのでstaticにしておきます。
ここに各リポジトリーの生成をするメソッドを作成していきます。今はIMeasureRepositoryしかないので,MeasureFakeとMeasureSqlServerの切り替えをするロジックを書いて行きます。
Factoriesの中でSqlServerとFakeを切り替える
それではメソッドを実装していきます。
using NDDD.Domain; using NDDD.Domain.Ripositories; using NDDD.Infrastructure.Fake; using NDDD.Infrastructure.SqlServer; namespace NDDD.Infrastructure { public static class Factories { public static IMeasureRepository CreateMeasure() { if(Shared.IsFake) { return new MeasureFake(); } return new MeasureSqlServer(); } } }
IMeasureRepositoryを返却するpublicでstaticなメソッドを作ります。名前はCreateMeasureとします。CreateMeasureRepositoryとしてもいいでしょう。このメソッドの中で,前回作ったSharedのIsFakeを参照し,IsFakeがTrueの時はMeasureFake,Falseの時はMeasureSqlServerクラスを返却するようにコーディングします。
画面側でFactoriesを呼び出す
あとは,MeasureFakeを呼び出していたLatestViewのLatestViewModelを生成する部分でFactoriesを使用するように変更します。
using NDDD.Infrastructure; using NDDD.Infrastructure.Fake; using NDDD.WinForm.ViewModels; using System.Windows.Forms; namespace NDDD.WinForm.Views { public partial class LatestView : Form { private LatestViewModel _viewModel = new LatestViewModel(Factories.CreateMeasure()); public LatestView() { InitializeComponent(); (省略) } private void SearchButton_Click(object sender, System.EventArgs e) { _viewModel.Search(); } } }
これで,Sharedのフラグに応じて,FakeかSqlServerが生成されるようになりました。
動作を検証する
それでは動作を検証してみましょう。SharedのIsFakeをTrueのままで実行すると,今まで通り,Fakeの値が表示されます。
IsFakeがTrueの時
IsFakeをFalseにする
SharedのIsFakeをfalseにします。
実行すると,SqlServerの方に接続されるため未実装の例外が出ます。これで,うまく切り替わっているという事がわかると思います。
#02_プロジェクトの追加
#03_依存関係
#04_ドメイン駆動開発でApplication層は必要?
#05_Domainのフォルダー構成
#06_Infrastructureのフォルダー構成
#07_WinFormのフォルダー構成
#08_Testsのフォルダー構成
#09_テスト駆動で実装するための事前準備
#10_テストコードとViewModelの追加
#11_テストコードを追加する
#12_ Repositoriesフォルダーの作成
#13_ Entitiesフォルダーの作成
#14_ Mockの作成
#15_フォーム画面の作成
#16_画面のコントロールデータバインドする
#17_Fakeを使ってタミーデータを画面に表示させる
#18_Fakeデータを画面に通知する
#19_PropertyChangedの方法を変更する
#20_Fakeとデータベースの値を切り替える方法
#21_Sharedクラスを作成する
#22_クラスを生成するファクトリークラスを作る
#23_#if DEBUGでFakeデータがリリースされないようにする
#24_DEBUGモードであることをわかりやすくしておく
#25_Factories以外から生成できないようにしておく
#26_Factoriesの呼び出しはViewModelで行う
#27_外部の設定ファイルの値で判断する
#28_Fakeデータを切り替える方法
#29_FakePathを設定ファイルとSharedに移す
#30_Fakeデータのバリエーション
#31_Shareクラスの活用方法
#32_ベースフォームを作る
#33_SharedにログインIDを記憶する
#34_BaseFormでログインユーザーを表示する
#35_ValueObject
#36_ValueObjectを作成する
#37_抽象クラスValueObjectを使用してイコールの問題の解消
#38_AreaIdにビジネスロジックを入れる
#39_AreaIdクラスをEntityに乗せる
#40_MeasureDateの作成
#41_MeasureValueの作成
#42_オブジェクト指向の自動化
#43_Repositoryの具象クラス
#44_例外処理
#45_例外の作成
#46_インナーエクセプション
#47_例外の欠点
#48_メッセージの区分
#49_エラー処理の共通化
#50_ログの出力
#51_タイマー処理はどこに置く?
#52_タイマークラスの作成
#53_StaticValues
#54_Logics
#55_Helpers
#56_Module
#57_トランザクションはどこでかける?
#58_特徴を見極める
#59_さいごに