前回は例外の作り方のお話をしました。今回はインナーエクセプションというお話をします。
インナーエクセプションとは?
エラーの元になった例外の事です。Exceptionクラスの引数には,メッセージ以外にInnerExceptionという引数を設定でき,例外を生成するときに,元になった例外を設定しておくことができます。
なぜインナーエクセプションが必要か?
例えばCSVファイルを読み込むときに,いろんな例外が出る可能性があります。ファイルがなかったり,フォルダーがなかったり,アクセスしようとしているパソコンと通信できなかったりします。どんな形であれ,CSVを読めなかった場合は,「CSVの読み込みに失敗しました」というメッセージを出したい場合は,オリジナルの例外として,CsvReadExceptionなどを作成することで解決できます。しかし,本当の例外はネットワークのエラーかファイルのエラーかをログなどには書いておきたいので,CSVの読み込みに失敗したら,CsvReadExceptionを生成して通知するんだけど,元になった例外として,マイクロソフトの通知する例外も設定しておくと,後で調査しやすいなどの利点があります。
インナーエクセプションの使い方
MeasureFakeは無理矢理Nullを返していましたが,それは削除してください。
Fakeのデータを読み込むときに,各種例外が発生する可能性があります。ファイルなしや,フォルダーなし,データなし,valueの1番目に値がなければインデックスエラーなど,いろんな例外が予想されます。いちいち例外によって処理を分けるのは面倒なので,一括でFakeExceptionとして,なんだかわからないけど,とにかくFakeデータの取得に失敗したよという事だけをユーザーインタフェースで伝えるようにします。
FakeExceptionの作成
ドメイン層のExceptionsフォルダーに「FakeException」を新規で作成します。
using System; using System.Collections.Generic; using System.Linq; using System.Text; using System.Threading.Tasks; namespace NDDD.Domain.Exceptions { public sealed class FakeException : Exception { public FakeException(string message, Exception exception) : base(message, exception) { } } }
コンストラクタでメッセージとInnerExceptionを受けます。それをそのまま継承しているExceptionに引き渡しています。
MeasureFakeにFakeExceptionを実装する
今作成したFakeExceptionをMeasureFakeで使用します。
using NDDD.Domain; using NDDD.Domain.Entities; using NDDD.Domain.Exceptions; using NDDD.Domain.Repositories; using System; namespace NDDD.Infrastructure.Fake { internal sealed class MeasureFake : IMeasureRepository { public MeasureEntity GetLatest() { try { var lines = System.IO.File.ReadAllLines( Shared.FakePath + "MeasureFake.csv"); var value = lines[0].Split(','); return new MeasureEntity( Convert.ToInt32(value[0]), Convert.ToDateTime(value), Convert.ToSingle(value)); } catch(Exception ex) { throw new FakeException( "MeasureFakeの取得に失敗しました", ex); //return new MeasureEntity( // 10, // Convert.ToDateTime("2020/12/12 12:34:56"), // 123.341f); } } } }
CatchしたときにFakeExceptionに変換していますが,引数で発生元の例外exを引き渡しています。これで,FakeExceptionだけど,発生元の例外を記憶した例外として通知されます。
MeasureFake.csvのファイルが無い状態にする
CドライブのNDDDFakeフォルダーのMeasureFake.csvファイルの名前をリネームして,ファイルが存在しない状態にします。今回の例ではファイル名の最初にアンダーバーを入れています。
動作の確認
この状態で実行してSearchボタンをクリックすると,FakeExceptionの例外メッセージが表示されることが確認できます。
ブレークポイントを使って確認
LatestViewのSearchボタンクリックイベントのcatchにブレークポイントを置いて,インナーエクセプションが入っていることを確認しましょう。
実行して,ウォッチで中を確認すると,ファイルが見つかりませんでした・・・的なメッセージがInnerExceptionに設定されていることが分かります。このメッセージをログに出力しておけば,エラーの調査が容易になります。こんな感じで,流れの中で発生する例外を自作の例外に置き換えて,インナーエクセプションに起点となった例外を入れることで,エラー処理が容易になります。
#02_プロジェクトの追加
#03_依存関係
#04_ドメイン駆動開発でApplication層は必要?
#05_Domainのフォルダー構成
#06_Infrastructureのフォルダー構成
#07_WinFormのフォルダー構成
#08_Testsのフォルダー構成
#09_テスト駆動で実装するための事前準備
#10_テストコードとViewModelの追加
#11_テストコードを追加する
#12_ Repositoriesフォルダーの作成
#13_ Entitiesフォルダーの作成
#14_ Mockの作成
#15_フォーム画面の作成
#16_画面のコントロールデータバインドする
#17_Fakeを使ってタミーデータを画面に表示させる
#18_Fakeデータを画面に通知する
#19_PropertyChangedの方法を変更する
#20_Fakeとデータベースの値を切り替える方法
#21_Sharedクラスを作成する
#22_クラスを生成するファクトリークラスを作る
#23_#if DEBUGでFakeデータがリリースされないようにする
#24_DEBUGモードであることをわかりやすくしておく
#25_Factories以外から生成できないようにしておく
#26_Factoriesの呼び出しはViewModelで行う
#27_外部の設定ファイルの値で判断する
#28_Fakeデータを切り替える方法
#29_FakePathを設定ファイルとSharedに移す
#30_Fakeデータのバリエーション
#31_Shareクラスの活用方法
#32_ベースフォームを作る
#33_SharedにログインIDを記憶する
#34_BaseFormでログインユーザーを表示する
#35_ValueObject
#36_ValueObjectを作成する
#37_抽象クラスValueObjectを使用してイコールの問題の解消
#38_AreaIdにビジネスロジックを入れる
#39_AreaIdクラスをEntityに乗せる
#40_MeasureDateの作成
#41_MeasureValueの作成
#42_オブジェクト指向の自動化
#43_Repositoryの具象クラス
#44_例外処理
#45_例外の作成
#46_インナーエクセプション
#47_例外の欠点
#48_メッセージの区分
#49_エラー処理の共通化
#50_ログの出力
#51_タイマー処理はどこに置く?
#52_タイマークラスの作成
#53_StaticValues
#54_Logics
#55_Helpers
#56_Module
#57_トランザクションはどこでかける?
#58_特徴を見極める
#59_さいごに